BOOK REVIEW : 大東亜戦争「敗因」の検証 : 佐藤 晃著  芙蓉書房

BOOK REVIEW :  大東亜戦争「敗因」の検証 :佐藤 晃著  芙蓉書房

「帝国海軍善玉論」の虚像

著者は、昭和2年生まれ。大分県国東半島出身。陸軍士官学校第六十一期生。終戦後三井鉱山に入社。

日本海軍は、戦略・輸送・情報の理解が全くなかった。

日露戦争の艦隊決戦の大勝利で艦隊保存主義が沁み込んだ太平洋戦線の戦場で提督たちは逃げ帰ってばかりいた。

米国海軍長官ノックスが言った。

「日本軍とは近代戦を全く理解していないか、近代戦を戦う資格のない軍隊である。」

太平洋艦隊の司令長官ニミッツが言った。

「日本は戦争の先っぽではアメリカに勝ったが、戦略では無為に負けた」

そしてニミッツは、こうも言っている。

「古今の先史において、主要な武器が、その真の潜在能力を少しも把握されずに使用されたという稀有の例を求めるとすれば、それはまさに第二次大戦における日本潜水艦の場合である。」

南太平洋方面司令官ハルゼーは言った。

「心配するな。日本人は勝ったと思ったら引き上げて行く。追撃してきはせぬ」

ニミッツの言う戦略について、帝国海軍の辞書には「戦略」という言葉がない。

「海戦要務令」の根底にあるのは、太平洋に米艦隊を迎え撃ち、艦隊決戦で勝つというものである

航空部隊も潜水艦部隊もそれに対する、支援協力の域に留めおかれたまである。

独伊と協力する全世界的大戦略はおろか、島々の争奪戦を舞台とする戦略作戦など、考えたこともない戦闘方式である。

帝国海軍のエリート達は、考えたこともない戦闘方式なのである。

「海戦要務令」には、潜水艦による通商破壊作戦にも触れられていない。

「海軍乙事件」について触れると、消えてなくなった厳重要作戦計画書に不審も抱かずに戦闘を続けるということがあり得るだろうか。

「海軍甲事件」については、山本五十六は暗号を解読されて敵の迎撃にあって撃墜された。

海軍は、暗号を解読されていることに疑問もなく終戦まで使い続けた。

海軍の暗号は解読されたが、陸軍の暗号は解読されていない。

日本艦隊に「艦隊保全主義」という牢固たる思想がある。

艦隊決戦の日までなるべく戦力を損なわずに残しておこうとする思想である。

長年訓練されていると、いきつく先は憶病になる。

海軍航空隊の指揮官たちの戦果確認能力が、まるでなかったことに中枢部が気付かなかった。

この、戦果誤認もまた致命的な敗戦原因である。

日本軍にとって大きな問題は、海軍統帥権の独立であった。

明治32年1月、時の海相山本権平は「戦時大本営条例」の改訂・海軍軍令部の独立を申し出たのである。

参謀総長、川上操六は言下に否定した。

明治36年12月に「戦時大本営条例」は、海軍の主張通り改訂された。

政府・陸軍参謀本部・海軍軍令部の三者がそれぞれ独立して天皇に直隷する。

その三者を統括するのは天皇以外には存在しない。

そして天皇を支えるものは、木戸幸一に代表される宮中グループである。

陛下に御自らこの三者を統括される能力は期待出来ない。

従って三者の上に立つ統合参謀本部のような組織が必要だった。

総理大臣が、統合参謀総長を務める組織改正ならまだましであった。

大東亜戦争は、海軍によって陸軍が太平洋戦争に巻き込まれてしまった。

「対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案」は、昭和16年11月15日 大本営政府連絡会議にて、大日本帝国の戦争戦略として正式決定されました。

 

山本五十六の「真珠湾攻撃」の勝利によって始まった太平洋戦争は、連合艦隊の発言力を強め、勢いに乗った海軍は、当初案に全くなかった「がダルカナル島」に海軍が飛行場を作ったのです。

しかし、ガダルカナルの飛行場は米軍に占領されてしまいました。

そこで海軍から陸軍に兵を送って奪回してくれと言われ、米軍は少数部隊だと嘘をつかれ信用した陸軍は一木支隊を送りましたが、全滅しました。

海軍は、米豪遮断作戦を考えていたので陸軍部隊を要請したのですが、武器弾薬、食料が不足で部隊は全滅しました。

それから、陸軍は海軍に引きずられて予期せぬ戦いを強いられ、米軍と消耗戦を戦うことになります。

このように、海軍の要請により、陸軍は部隊を南洋の島々に送りましたが、海軍は陸軍部隊を南洋の島に見捨てたのです。

始めは、海軍もインド洋に南雲機動部隊を送りセイロン島の英海軍と戦闘して空母一隻を撃沈しましたが、英海軍残存艦隊に逃げられてしまいました。

山本長官はミッドウエイ作戦のため南雲部隊を引き上げました。

そしてミッドウエイで大敗したためインド洋の英軍空母や戦艦部隊と戦闘するために新機動部隊を作りました。

しかし、山本長官の反対にあい英艦隊との再決戦は実現せず、日本軍の勝利はなくなったのです。

「日本海軍の戦略発想」の著者の千草正孝氏は、その著書で山本五十六長官は、躁鬱病で重症の脚気だったと述べています。

敗戦後、陸軍悪玉論がマスコミにより喧伝されたが、真実は海軍こそ敗戦の最大戦犯であり「海軍善玉論」にはしゃいでいる海軍エリート達に怒りを抑えきれずにこの本を出版した佐藤 晃氏の無念が伝わって来る。

 

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佐藤 晃
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