海軍―もし山本がハワイへ出撃していたら(1)「ハワイ作戦の真のねらい」

 海軍―もし山本がハワイへ出撃していたら(1)「ハワイ作戦の真のねらい」

 

山本が及川海相に、対米戦では開戦初頭にハワイ空襲が必要であると口頭で述べたのは、昭和15年11月26日から29日まで、海軍大学校で行われた図上演習の直後であった。

山本がこの図上演習を実施した目的は、よく知られる嶋田支那方面艦隊司令長官への書簡中に明白だ。

 

「海軍中央部課長以下位の処にては、此の時流に乗り、今が南方作戦の仕時なりと豪語する輩もありと聴きしに依り、特に南方作戦の図演を軍令部に強要セ氏も、間に合わずとして渋り居るに付き、小生統裁にて軍令部、大学校を動員して実施せり。

 

 其の目的は、16年度訓練中には南方作戦の事を考慮し、種々折込演錬する要あると、此の作戦により物動方面、兵力方面に亘り不足の程度を如実に示現し、中央及び艦隊幹部に真の認識を与えんとする事にありたる次第に候。」

 

山本が言う「時流」とは、ヨーロッパでドイツが西部戦線の陸上戦闘でフランスを打倒し、日本軍が北部仏印に進駐し、日独伊三国同盟が結ばれ、日本海軍が出師準備の一部を発令して戦時編成への移行を始め、さらにアメリカがこれらの反動として、対日経済圧迫を次第に強化したことをいう。

 

 この「時流」が血気の中堅将校に、かなりの刺激を与えたことは確かだった。

山本が述べるように、例えば軍令部第一課首席部員の神重徳中佐は、昭和15年10月28日、参謀本部作戦課に対し進言していた。

 

 「蘭印をやり英米を敵としても、昭和16年4月中旬以降であればさしつかえない」

「外戦部隊の7割の戦備が12月に概成し、1月中旬に完成する。蘭印だけやるならやれる。4月中旬になれば対米7割5分の戦備が整う」

 

「昭和16年末になると修理を要する艦が多くなるので、同年4,5月ころが戦争の好機だ。」

 

 山本は、嶋田への書簡中に、図演の目的を「相当有効」に達成したと述べるのであるが、山本の図演の結果に対する所見の要旨は、

 

「米国の戦備が余程遅れ、又英国の対独作戦が著しく不利ならざる限り、蘭印作戦に着手すれば早期対米開戦必死となり、英国亦追随し、結局蘭印作戦半途に於いて対蘭対米対英数カ国作戦に発展するの算極めて大なり」との認識隣、結論は、

 

「少なくとも其の覚悟と充分なる戦備を以ってするに非れば、対南方作戦に着手すべからず」というにあった。

 

 この山本の所見には、図演に参加した古河第ニ艦隊司令長官の所見も一致したし、山本の結論には、軍令部総長の博恭王も及川海相も同意したのであった。

 

それではこの「時流」に対する次の処置はどうするのか。山本は続ける。

 

「右の如き状況を覚悟して、尚開戦の已むなしとすれば、むしろ最初より対米作戦を決意し、比島攻略を先にし、以って作戦線の短縮、作戦実施の確実を図るに如かず。」

 

「故に開戦やむなき情勢となれば、即ち米英蘭数カ国作戦となるべきは当然なり。」

 

こうして次に山本は、対米作戦のためには開戦初頭のハワイ空襲が必要だと、及川に持ち出したのであった。

 

 つまり山本の見解では、蘭印占領を目的とする対オランダ一国作戦の阻止と、ハワイ空襲作戦の主張とが、一対となっているのだ。

 

 山本は、昭和15年9月から、米内光政を現役に復帰して連合艦隊司令長官とするよう及川に上申していたのだが、昭和15年11月末の此の時点で、ハワイ空襲のための人事として、山本第一航空艦隊司令長官・米内連合艦隊司令長官の構想を進言したかどうかは、確実でない。

 

 約1ヶ月の熟慮のあと、昭和16年1月7日付けの及川への書簡で、初めて具体的に上申した可能性が大きいと思う。

 

 ハワイ空襲が、山本の脳裏では、決死の「片道攻撃」に類する作戦であった以上、自身が直率して実行するというのが、軍人として常識的な考え方だ。

これほどの作戦を他人にやらせるというのは、責任を果たすゆえんではない。

 

 当時の山本の心境は、なんとも神秘的だ。

しかし、私は、つぎのような段階に分けて分析すると、はじめてその秘密を説きうるのではないかと思う。

 

  1時流に乗る対欄印作戦の阻止。

  2右に伴う対米作戦検討の必要性。

  3.ハワイ空襲の必要性。

  4.ハワイ空襲の第一航空艦隊司令長官への上申。

  5.米内連合艦隊司令長官への上申。

  6.軍令部総長・博恭王の引退。

  7.米内軍令部総長の実現。

  8.戦争の阻止。

 

 

 

 

 

 

 

 

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