[国会議員に読ませたい敗戦秘話] 政治家は60年安保闘争の愚かな歴史から何も学んでこなかったのか?
【国会議員に読ませたい敗戦秘話】 2016.5.6 12:00更新
政治家は60年安保闘争の愚かな歴史から何も学んでこなかったのか?
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「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
19世紀後半にドイツ統一を主導し、初代ドイツ帝国首相を務めたオットー・フォン・ビスマルクの格言である。
翻って日本の現状をみると、国家の舵取りを担うべき存在である国会議員の浅学非才は目を覆うばかりだ。
わけても近現代史に関する知識が決定的に欠けている。
戦後70年を迎えた2015年は、その無学さが顕著に現われた。
安倍晋三首相が、集団的自衛権の政府解釈変更に伴い、安全保障法制の整備に乗り出したからだ。
クライマックスとなった9月18日夜。参院本会議での安保法案の採決を前に、社会、共産両党のみならず、つい数年前に政権を担っていた民主党までも徹底抗戦に出た。
参院特別委員会での採決では、鴻池祥肇委員長めがけてダイビング攻撃を仕掛けるなど肉弾戦を繰り広げたあげく、「暴力的採決は無効だ。
あんな採決が可決になったらわが国の民主主義は死ぬ」(民主党・福山哲郎参院議員)と訴えた。
19日未明にもつれ込んだ本会議採決では、社民党の福島瑞穂副党首らが「戦争本案ハンターイ」と気勢を上げ、「生活の党と山本太郎となかまたち」の山本太郎参院議員は一人牛歩戦術を試みた末、議場に向かって「アメリカと経団連にコントロールされた政治家は辞めろ!」と叫んだ。
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国会議事堂の外では、護憲団体などが「安倍政権はファシスト」「右翼内閣許さな~い」などと叫んでいたが、議場内のやりとりも同レベルだったわけだ。
「国権の最高機関」は真摯な議論を否定して低俗なスローガンを繰り返す場なのか。
「とても子供には見せられない」と思った人も多いはずだ。
安保法制をめぐる国会内外の馬鹿騒ぎを、1960年の日米安全保障条約改定をめぐる「安保闘争」と重ねた人もいるだろう。
ただ、55年前の騒ぎは現在とは比較にならぬほど大規模だった。
首相官邸や国会議事堂は連日デモ隊に埋め尽くされ、安倍首相の祖父である岸信介首相は条約承認と引き替えに退陣を余儀なくされたが、安保闘争の経緯を追うと、闘争を主導した社会党の変節に驚く。
「八千万民族は、われわれ同胞は他民族の軍政下にあることを忘れてはなりません。不平等条約の改正をやりことが日本外交に与えられた大きな使命なり…」
これは自民党議員の発言ではない。
社会党の浅沼稲次郎書記長(後に委員長)が57年の衆院本会議の代表質問に立った際の発言である。
他の社会党幹部も異口同音に安保条約改定を声高に求めていたのである。
ところが、日米同盟が強化されることを危惧したソ連が、「日本の中立化」をキーワードに政界やメディアへの工作を強化すると、社会党は「安保条約破棄」にあっさりと舵を切ってしまった。
足並みをそろえるように朝日新聞などは「米国の戦争に巻き込まれる」とキャンペーンを張り、政府は一時、自衛隊の出動を検討するほどの騒擾になった。
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民主党や一部メディアは安保法制で同じような騒ぎを作り出せば、安倍首相を退陣に追い込めると踏んでいたようだが、国民の多くは冷静だった。
SEALDs(シールズ)や護憲団体などが国会周辺でデモを繰り広げたことを「革命前夜」のように報じたメディアもあったが、60年安保闘争に比べれば微々たる勢力にすぎない。
やはり、中国が急速な軍事拡張を続け、東シナ海や南シナ海で横車を押すように海洋権益を拡大している姿を目の当たりにし、日本人の安全保障への意識は大きく変わったのである。
遡れば、02年9月に小泉純一郎首相(当時)が訪朝し、北朝鮮の金正日総書記(同)が日本人の拉致を認め、謝罪したあたりから、日本人は左翼勢力のプロパガンダに眉をひそめるようになったように思える。
にもかかわらず、国会議員はそんな国民意識の変化に鈍感に見える。
共産党の志位和夫委員長は「北朝鮮、中国にリアルの危険があるのではない」と言い放った。
野党だけではない。
政権与党の一員で自民党総務会長を務めたこともある野田聖子衆院議員は「南沙諸島は直接日本に関係ない。
南沙の問題を棚上げにするくらい活発な経済政策のやりとりとか、互いの目先のメリットにつながる(日中の)2国間交渉をしなければならない」と力説した。
あまりの無知に開いた口がふさがらない。
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かつて一大勢力を誇った社会党が社民党と名を変えても国会議員数人の弱小政党になってしまったのはなぜか。
同じく社会党の血を引く民主党の支持率が一向に上がらないのはなぜか。
所属する国会議員が歴史から何も学んでこなかったからではないか。
※この文章は「国会議員に読ませたい敗戦秘話」(産経新聞出版)の序章から抜粋しました。
産経新聞の東西編集局が特別取材班を組み、あまり光があたることのなかった先の大戦末期から現代までの70年の歴史を貴重な証言をつむぎながらたどったノンフィクションです。
「敗戦」という国家存亡の危機から復興し、国際社会で名誉ある地位を築くまでになった日本。
その重要な節目節目で歴史の歯車を回し続けたのは、声高に無責任な主張を繰り返す人々ではなく、ごく少数のリアリストたちでした。
彼らが東アジアのちっぽけな島国の独立自尊を保つべく奔走してきた事実を埋もれさせてなりません。
安倍晋三首相は、憲法改正について「私の在任中に成し遂げたい」と明言しています。
つまり在任中に衆参両院で改憲勢力が3分の2以上を占める情勢になれば、米軍占領下の1947年5月に施行以来、指一本触れることができなかった「平和憲法」の是非を国民一人一人に問いたいと考えているわけです。
決断の時は迫りつつあります。
国会議員が与野党を問わず、戦後の真の歴史を知らずして、その時を迎えるとしたら、日本国民としてこれほど不幸なことはありません。
国会議員よ、歴史から目をそむけてはならない。
本書にはこんなメッセージがこめられています。
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